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Online edition:ISSN 2758-089X

血小板数低下を伴った食道静脈瘤に対する部分的脾動脈塞栓術'(PSE)併用内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)の検討

目的:脾機能亢進症とくに血小板数低下を伴った食道静脈瘤は治療に難渋することがある.今回,我々は血小板数低下を伴った食道静脈瘤に対して部分的脾動脈塞栓術(PSE)併用内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)を行い,EVL単独施行例と比較した. 対象と方法:血小板数5万以下の食道静脈瘤患者に対しPSE併用EVLを48例に,EVL単独治療は42例に施行しレトロスペクティブに比較した.両治療群の背景には有意差は認めなかった.静脈瘤出血の予防治療の場合には,まずPSEを施行し約2週間後にEVLを行った.静脈瘤破裂の場合には,EVLで止血処置を行い,約2週間後にPSEを施行した.PSEによる脾塞栓術は平均68%であった.EVLは静脈瘤形態がF1以下かつ発赤所見がRed color(RC)sign(-)となるまで,繰り返し施行した.治療後に静脈瘤がF2に増大またはRC signの出現を静脈瘤の再発とした.両治療施行後の静脈瘤の累積再発率,出血率,生存率をKaplan-Meier法とCox比例ハザードモデルによる多変量解析にて検討した. 結果:1)治療後に静脈瘤の再発は高頻度にみられたが,PSE併用EVL後の再発率はEVL単独治療と比較し有意(p=0.036)に低率であった.2)静脈瘤の出血率についてもPSE併用EVL例では有意(p=0.021)に低値であった.3)累積生存率はPSE併用EVL例は有意(p=0.041)に高率であった.4)多変量解析の結果,PSE併用EVL例の静脈瘤再発のハザード比は0.42,静脈瘤出血のハザード比は0.18,死亡のハザード比は0.29で,EVL単独例と比較し有意な予後改善を示した. 結論:血小板数低下を伴った食道静脈瘤患者に対するPSE併用EVLは,静脈瘤再発や出血の予防ができ,予後の改善も期待できるため有用な治療法と思われた. (平成19年12月19日受理)
著者名
柴田 憲邦,他
34
2
89-98
DOI
10.11482/2008/KMJ34(2)089-098.2008.jpn.pdf

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