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Online edition:ISSN 2758-089X

マウス胎子肝臓の赤芽球島中心マクロファージと類洞腔マクロファージの関連性について -免疫組織化学ならびに電子顕微鏡による形態学的観察-

 胎生造血期の肝臓に分布するマクロファージと生後の肝常在性マクロファージであるクッパー細胞との関連を検討するため,胎子期から新生子期のマウス肝臓を用い,ラット抗マウスマクロファージモノクローナル抗体F4/80免疫染色と鉄染色による光顕観察ならびに電子顕微鏡観察を行い比較した.肝臓単位面積あたりのF4/80陽性細胞数は肝臓形成初期から生後早期まで急速に増加するが,生後4日と生後13日との間で有意に減少した.F4/80陽性細胞は胎生11日からすでに肝臓内に少数存在し,原始類洞腔でスカベンジャーマクロファージとして大小様々な細胞断片を取り込み,細胞質には鉄陽性封入体が認められた.肝臓造血最盛期にF4/80陽性細胞は造血巣内の赤芽球島中心マクロファージとなり,赤芽球からの放出核をはじめとして大小の封入体を含み,多数の鉄陽性封入体を含有した.造血退縮期の胎生19日で, F4/80陽性細胞は造血巣内に存在するほか,造血細胞と離れ肝細胞間に孤立性に分布した.孤立性のF4/80陽性細胞の多くは鉄反応陽性を示したが,ほかに鉄陰性で小型球形の単核細胞が認められた.生後早期に肝細胞間に孤立性に分布する小型のF4/80陽性細胞は鉄反応陰性であり,高い核一細胞質比を示した.生後13日の肝臓で, F4/80陽性細胞は造血系細胞とは離れ,生後のクッパ-細胞と同様に頬洞壁に限局し,鉄陽性封入体を含まなかった.新生子期の肝臓には,アポトーシスならびにdarkcell formationの過程を経て細胞死にいたる大型マクロファージが認められた.新生子期は肝造血の退綿に伴って肝臓マクロファージにも著しい変化がみられる特異的な期間であり,卵黄嚢に由来する胎生マクロファージの少なくとも一部は新生子期の肝臓内で細胞死に陥り消失すると推察された.生後早期の肝臓内に出現する鉄反応陰性の小型単核細胞が,類洞腔に常在するマクロファージの前駆細胞と考えられた.(平成15年9月19日受理)
著者名
園田 祐治
29
2
145-159
DOI
10.11482/KMJ29(2)145-159.2003.pdf

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