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強迫性障害患者の神経心理機能における行動療法の効果 ―記憶機能について―

【問題と目的】  最近の神経心理学研究では,強迫性障害において,視覚空間性記憶や注意・遂行機能といった認知機能の障害が指摘されている.しかしながら,特に繰り返しの確認行為と記憶機能との関連については論議があり,一致した見解には至っていない.本研究は,強迫性障害患者が行動療法後に強迫症状の有意な改善を示した際の,記憶機能の変化について検討することを目的とする. 【方法】  対象者は,SCIDによって診断された強迫性障害の外来患者で,行動療法単独治療が有効であったもの,および十分な薬物療法(少なくとも8週間以上のfluvoxamine200mg/日の服用)が無効で,行動療法を加えて改善を示したものとである.主に曝露反応妨害法を用い,マニュアル化された1セッション45分の行動療法を12週間おこなった.記憶機能は,R-OCFTとWMS-Rを用いて行動療法の前後に評価した.強迫症状の重症度は,Y-BOCSにより評価した. 【結果】  行動療法後の,Y-BOCS得点の減少率は,58.26±13.28%(範囲:36.36%~78.13%)であった.症状改善後の評価において,R-OCFTの「模写」「直後再生」「遅延再生(40分後)」得点が有意に増加した.さらに,WMS-Rの「遅延再生」「言語性対連合Ⅰ」「論理的記憶Ⅱ」「視覚性再生Ⅱ」において有意な増加がみられた. 【考察】  本研究は対象者が少ないため,結果は慎重に取り扱う必要があるが,これらの結果は,行動療法で強迫症状の十分な改善が達成された際,記憶の遅延再生がある程度回復するであろうことを示している.強迫性障害患者の認知機能の基盤となるメカニズムを明らかにするためには,対象者を増やし,記憶への自信といった他の記憶関連因子や,注意・遂行機能といった他の認知機能,さらにこれらの機能と脳機能画像との関連を分析することも含め,さらなる研究が望まれる. (平成18年4月27日受理)
著者名
河本 緑,他
32
3
139-145

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