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膵液を用いた膵管発癌機構の解析 ―発癌物質を投与した動物膵液の変異原性―

 膵癌は悪性腫瘍の中でも予後不良である難治性癌の1つである.その新たな治療戦略として,癌の発生及び進展の阻害,あるいは遅延させる化学予防法の開発が重要視されている.  膵管上皮細胞は膵液に暴露されている事より,膵液中に発癌物質が分泌される事が,膵管上皮細胞由来である膵管癌の発生には重要であると考えられるが,膵液の発癌における役割に関する知見は乏しい.今回我々は,膵管癌の好発するハムスターと,膵管癌の発生が稀であるラットについて,強力な膵発癌物質であるN-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP),N-nitrosobis(2-hydroxypropyl)amine(BHP)を投与して採取した膵液の変異原性について,Ames test(微生物変異原性試験法)を用いて検索した.また,その膵液中の変異原物質をHigh-performance liquid chromatography(HPLC)を用いて検索した.  その結果,ハムスターではBOP,BHPを投与後採取した膵液には強い変異原性が認められ,HPLC解析でも膵液中にBOP,BHPの代謝産物が認められた.一方,ラットではいずれの物質を投与しても膵液に変異原性は認めず,HPLC解析でも膵液中にBOP,BHPの代謝産物は認められなかった.  以上の結果より,膵管癌の発生には膵液中に変異原物質が分泌されている事が重要な役割を果たしている事,膵液を用いたAmes testが膵管発癌物質のスクリーニング系になる可能性が示唆された.(平成17年10月24日受理)
著者名
岡 保夫
31
4
215-225

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