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Online edition:ISSN 2758-089X

個別包装アルコール綿変更による経済効果 ―大学附属病院における推計と実際―

 作り置きアルコール綿は乾燥による濃度低下によって消毒効果の低下や汚染が問題となっている.そのため,当院では個別包装アルコール綿の導入前に病棟や外来におけるアルコール綿使用回数や使用量,廃棄量を調査した.また定価ベースでの費用削減の推定し,実際の経済効果についても検討したので報告する.  作り置きアルコール綿1枚のコストは,定価ベースで個別包装品より低額であったが,実際には平均約3枚使用していたので,個別包装品の高いものと同等となった.毎日アルコール綿を新しく作り替えていたため残廃棄の無駄は年間482万円もあり,変更によって定価ベースで年間420~1,150万円の費用削減が推計された.そのため,医薬品の個別包装品4種類を病棟や外来で試用し,アンケートを実施した.衛生的でポケットに入れて持ち運べるのが便利と言う意見が多かったが,一部に薄くて量が足りない,いちいち開けるのが面倒という意見もあった.エタノール含有綿の評判が全般的によかったが,理由はにおいや開封のしやすさ,大きさなどであった.導入後3ヵ月以降2ヵ月間の検討から,実質削減費用は年間約50万円と推定された.過去の報告や予測値とは大きく異なっており,実際の購入金額が病院規模やタイプによって異なり,作り置きアルコール綿の作り方や廃棄方法も異なるため単純な比較は難しいと思われた.しかしながら,一般的には費用のかかる院内感染において,経済的にも感染防止のためにも有用と考えられた. (平成17年10月14日受理)
著者名
寺田 喜平,他
31
3
161-165
DOI
10.11482/KMJ31(3)161-165.2005.pdf

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