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Online edition:ISSN 2758-089X

軽度の溶血性貧血を示した Hb Peterborough [β111 (G13) Val → Phe]の症例

 軽度の溶血性貧血と診断された52歳の女性,岡山県出身,の溶血液について等電点電気泳動法で異常Hbの検索を行った所,Hb Fバンド付近に異常分画を検出した.単離した異常Hb分画から調製したトリプシン消化ペプチドの逆相HPLCとアミノ酸組成分析による解析から,βTp-12aペプチド(β105-112:Leu-Leu-Gly-Asn-Val-Leu-Val-Cys)にアミノ酸置換(Val→Phe)の存在が推測された.DNAのPCR産物の直接シーケンシングにより,β111コドンGTCの第1塩基GのTへの置換が明らかになった.これはβ111Val→Pheの変異を示しており,これによる酸素親和性低下と不安定性をもつHb異常症,Hb Peterborough[β111(G13)Val→Phe]と同定された.一方で,Hb合成試験はβ/α=0.72-0.79と軽度のβ鎖グロビンの合成抑制を示し,不安定β鎖グロビン異常Hbによるためと考えられた.実弟もこのHbの保因者であり,軽度の溶血と,β/α値の軽度低下を示した.  この異常Hbの発見は,本邦第2例目であるが,第1例目の大阪の家系との関連は明らかになっていない. (平成16年6月15日受理)
著者名
末次 慶收
30
1
21-30
DOI
10.11482/KMJ30(1)021-030.2004.pdf

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