h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

代償性糸球体肥大における活性酸素種,一酸化窒素の動的変化の意義

 ネフロン数減少に伴う糸球体・腎肥大は糸球体硬化の前駆状態として認識されている。活性酸素種(ROS)は細胞内シグナル伝達の一部を担い正常細胞機能の遂行に重要な役割を果たすと同時に障害因子として働くという両義的役割を担っている。一方,一酸化窒素(NO)は内皮依存性の血管拡張反応のメディエーターである。ネフロン数減少後の代償性糸球体・腎肥大におけるROS,NOの動的変化の意義とそのメカニズムについて検討を行った。Wistarラットに片腎摘(NX)モデルを作成し,一群にSOD mimeticであるTempolを投与した。ROS,NO産生変化を共焦点レ-ザ-顕微鏡を用い可視化検出した。NX後12時間,2,7,28日目に腎組織におけるROS,NOの変化とそれに伴う組織変化を解析した。腎摘後,腎重量/体重比は7日後より,糸球体体積比は12時間後より増加傾向を示し7日目では有意に増加した。NX群糸球体では7日目をピ-クとするROS産生増加が認められた。ROS産生増加及び糸球体・腎肥大はTempolで抑制された。糸球体ではAkt,ERKの経時的な活性化を認めた。これらの変化はTempolの投与にて抑制された。一方NX糸球体でのNO産生は12時間で最大となりその後基底値に復した。以上の結果から,早期の糸球体肥大(血管拡張反応)には一過性のNO増加が関与し,ネフロン数減少後期の糸球体・腎肥大にはROSの関与が示唆された。 (平成18年10月19日受理)
著者名
大関正仁
33
2
125-136
DOI
10.11482/2007/KMJ33(2)125-136.2007.pdf

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