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Online edition:ISSN 2758-089X

進行乳癌に対するドセタキセルとドキシフルリジン併用化学療法の抗腫瘍効果,有害事象,効果予測因子の検討

目的:ドセタキセル(Doc)はチミジン・フォスフォリラーゼ(TP)の誘導により,ドキシフルリジン(5’DFUR)の効果を増強し,両薬剤の併用は,乳癌移植モデルにおいて相乗的な抗腫瘍効果を示すことが報告されている.我々は,進行乳癌を対象に,隔週Docと5’DFUR連日経口投与による併用療法の臨床試験を行っている.今回,当教室で本併用療法を受けた症例を対象に治療効果,有害事象さらに効果予測因子を検討した. 患者と方法:当教室において本併用療法を受けた進行乳癌患者25例を対象とした.これらの症例のうち,原発腫瘍の免疫組織化学的検討が可能であり,治療効果が判明している17例において,BRCA1,TP発現量と治療効果との相関をみた. 結果:1)臨床的検討;本併用療法の奏効率は68.1%(15/22,3例は治療効果の判定不能)であった.グレード3または4の有害事象は20%(5/25)に認められた.2)効果予測因子の検討;BRCA1とTPのどちらか一つが陽性の症例の奏効率は92.3%(12/13),ともに陰性の症例の奏効率は0%(0/4)であった(P=0.003).多変量解析において,BRCA1陽性,TP陽性は,それぞれ奏効を予測する独立因子であった. 結論:本併用療法は,進行乳癌患者に対し,安全に投与が可能であり,強い抗腫瘍効果を示した.本併用療法の効果予測因子として,原発腫瘍のBRCA1とTP発現状況が有用なことが示唆された.(平成18年10月17日受理)
著者名
山本 裕
33
2
107-114
DOI
10.11482/2007/KMJ33(2)107-114.2007.pdf

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