h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

栄養療法が有効であった非特異性多発性小腸潰瘍症の1例

 症例は36歳,女性.26歳の時,小腸X線検査で回腸に多発潰瘍が認められたため,病変部を含めて遠位回腸が切除された.病理学的には特異的所見のないUL-Ⅰ~Ⅱの多発潰瘍で,臨床経過と併せて非特異性多発性小腸潰瘍症と診断された.その後再発し,下痢・貧血・低蛋白血症が持続したため当科へ入院した.小腸X線検査では,回腸に不整形で辺縁鋭利な潰瘍が多発し,さらに高度の狭窄・偽憩室・皺壁集中・管腔の硬化像が認められた.治療として中心静脈栄養療法を行ったところ,下痢は軽減し,便潜血は陰性となった.小腸X線検査で開放性潰瘍の略治が確認されたことから,昼間の栄養剤の経口摂取と夜間の経管成分栄養による経腸栄養療法を開始した.この過程で排便回数の増加と便潜血陽性がみられたが,治療前に比べ臨床症状は著明に改善した.退院後も在宅で経腸栄養を継続し,検査上軽度の貧血・低蛋白血症と便潜血陽性が認められたものの,臨床経過は良好と考えられた.本症はきわめて稀な難治性疾患で,外科的切除後もその多くは再発することが知られているが,栄養療法により長期間臨床的な緩解状態を維持することができたので報告した.                         (平成11年12月1日受理)
著者名
森山 友章,他
25
4
307-312
DOI
10.11482/KMJ-J25(4)307-312.1999.pdf

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