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一般地域集団における肝癌スクリーニングシステムに関する研究

 我が国における肝癌による死亡者数は年々増加の一途を辿っている.この背景には肝癌検診体制が確立していないこともその一因と考えられる.そこで,一般地域集団における肝癌の疫学を明らかにし,効率的な検診方法を検討した. 岡山県北西部の1市6町の40歳以上の住民を対象にし, 1997年6月と1998年1月の2年度にわたり「肝癌検診」を行った.検診方法は,スクリーニング検査で肝機能検査(AST,ALT, ALP, GGT, ZTT),肝炎ウイルスマーカー(HBs抗原, HCV抗体)を実施した.二次精検は,スクリーニング検査の異常者に対して超音波検査を行った.超音波検査で肝癌が疑われた受診者に対しては,医療機関において精密検査を行った. 受診者数は3709名(平均年齢62.0±9.9 (MEAN±SD)歳)であった.受診者のHBs抗原陽性率は0.9%, HCV抗体陽性率は8.4%, HCV抗体陽性者におけるHCV-RNA陽性率は58.7%,肝機能異常率は34.1%であった.二次精検の受診率は, 95.0%であった.発見肝癌は7例で全例がHCV-RNA陽性者であり,HCVの既感染例及び肝機能異常のみの受診者に肝癌は発見されなかった.肝癌発見率は,HCV抗体陽性者の2.22%, HCV-RNA陽性者の3.78%,受診者全体でみると0.19%であった.多重ロジスティク回帰分析ではZTT, ALT, AST,年齢がHCV感染における重要な因子であった. 肝癌発見率は今回検討を行った集団において0.19%で,HCV抗体陽性者では2.22%,HCV-RNA陽性者では3.78%と対象を絞り込むことにより高率となった.肝癌におけるhigh risk group の設定には, HCV-RNA陽性で肝機能異常者を対象とすることが最も有効であった.多重囗ジスティク回帰分析の結果やコストの面からAST, ALT, ZTT異常者に対しHCV抗体検査を行い,陽性者を対象に超音波検査を行う方法が最も効率的と考えられた.                               (平成11年8月20日受理)
著者名
井口 泰孝
25
3
193-202

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