h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

薬剤性肝障害58例の臨床的検討

 当教室で入院治療を行った薬剤性肝障害58例を1977年から1988年の25例と1989年から1998年の33例とに分け,比較検討した.起因薬剤は鎮痛解熱剤,抗生物質,循環器用剤の順に多く,鎮痛解熱剤が最近増加していた.また比較的安全とされている和漢薬やビタミン剤,健康食品でも肝障害がみられた.薬剤によるリンパ球幼若化試験(LST)の陽性率や好酸球増多の出現頻度は最近は低下傾向であった.また総ビリルビン値やアルカリフォスファターゼ値については,最近の症例において低下しており,病型分類では胆汁うっ滞型症例が減少し肝細胞障害型が増加していた.治療に関しては起因薬剤の中止が最も重要であるが,肝庇護剤やコルチコステロイドの投与も行われた.入院期間については胆汁うっ滞型が有意に長期入院が必要であった.重症型薬剤性肝障害は7症例あり,このうち4例では複数の薬剤によるLSTが陽性で,劇症型も2例(うち1例死亡)みられた.最近の当科で経験した薬剤性肝障害症例はアレルギーを示唆する検査所見が乏しくなっており,本邦の判定基準による確診例が減少傾向であった.       (平成11年5月26日受理)
著者名
大元 謙治,他
25
2
87-95
DOI
10.11482/KMJ-J25(2)087-095.1999.pdf

b_download