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Online edition:ISSN 2758-089X

Ethanolのラット膀胱平滑筋弛緩作用に関する研究 ―初代培養ラット膀胱平滑筋細胞を用いた解析―

 Ethanolが膀胱平滑筋を弛緩させる可能性が示唆されていることから,本研究ではラット膀胱平滑筋条および初代培養ラット膀胱平滑筋細胞を用い, ethanolのKCI誘発性[45Ca2+]流入に及ぼす影響を検討することにより, cthanolの膀胱平滑筋収縮抑制作用の発現機序について検討を行った. KCIは濃度依存性に膀胱平滑筋条を収縮させ,この収縮はethanolおよびverapamilにより有意に阻害された.これらの両薬物の同時存在下における膀胱平滑筋収縮の阻害の程度は,これらの薬物の単独存在下でみられた収縮阻害の程度と同一であった. KCIは膀胱底部より調製した平滑筋細胞への[45Ca2+]流入を濃度依存性およびincubation時間依存性に増加させた. KC1 (50 mM)誘発性[45Ca2+]流入は細胞膜脱分極阻害薬であるtetrodotoxin,および細胞膜安定化薬であるdibucaineとprocainamide,および電位依存性L型Ca2+チャネル阻害薬であるverapam旧こより濃度依存性に抑制された.また, 10 mM verapamilはこの[45Ca2+]流入を完全に消失させた. ethanolはKCI誘発性[45Ca2+]流入を濃度依存性に抑制し,電位依存性L型Ca2+チャネル活性化薬であるBay k-8644により誘発される[45Ca2+]流入も完全に抑制した. cthanolによるKCI誘発性[45Ca2+]流入抑制は,膀胱頂部および底部より調製した平滑筋細胞のいずれにおいても認められ,流入抑制作用の程度に差違は認められなかった.以上の実験成績から, ethanolによるKCI誘発性膀胱平滑筋収縮の抑制は, ethanolが平滑筋細胞膜の脱分極により誘発される電位依存性L型Ca2+チャネル活性化を介した細胞内へのCa2+流入を抑制することにより発現されることが明らかとなった.            (平成11年5月24日受理)
著者名
城谷 建二
25
2
77-86
DOI
10.11482/KMJ-J25(2)077-086.1999.pdf

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