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Online edition:ISSN 2758-089X

定量的CT法による末梢骨の骨量測定 ―臨床的有用性の評価―

 骨粗鬆症の診断には,正確な骨密度(BMD)の測定が必須である.末梢骨CT法(pQCT)は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)とは異なり,体積当たりのBMDが得られること,海綿骨と皮質骨のBMDを分離して測定できること,被曝線量が少ないことや,測定精度が良好なことなど優れた基本性能のため,骨塩定量法として注目されている.本研究では,pQCTによる骨塩定量法の意義を検討した. pQCT装置にはDensiscan-1000(ScancoMedical AG)を使用し,橈骨BMD (超遠位部の海綿骨BMD (rD50),超遠位部の海綿骨と皮質骨を併せたBMD (rDlOO)と骨幹部BMD (rP1 00))および脛骨BMD (超遠位部の海綿骨BMD (tD50),超遠位部の海綿骨と皮質骨を併せたBMD (tD100))を測定した. 男女共に, pQCTにより測定された若年群(22~44歳,男性107例,女性78例)の橈骨および脛骨BND)は,高齢群(60歳以上,男性17例,女性26例)よりも有意に高値であり,両群問の骨量減少は橈骨,脛骨ともにD50が他部位よりも減少率が大であった.性盖については,高齢群では男性がいずれの部位のBMDにおいても女性より有意に高値であった.pQCTで測定された橈骨BMDはDXAで測定された腰椎,橈骨および大腿骨頚部のBMDと有意(すべてP <0.001)の正相関を示し,腰椎BMDとはrD 50の相関(r=0.688)が最も良好であった.原発性骨粗鬆症の診断基準で定められた骨粗鬆症の診断一致度をDXAとpQCTで比較したところ, kappa score は0.31~0.59であった.椎体骨折の有無の識別能についてはrD50, rD100, rP100測定のROC下面積はほぼ同等であった. 今回のPQCTによる橈骨および脛骨BMDのin vivoの測定の結果,加齢に伴うBMDの減少を知るにはD50の測定が適していた.また, D50はDXAによる腰椎BMDと相関が良好であり,全身的な海綿骨のBMDを反映する可能性が示された.腰椎DXAと橈骨pQCTによる骨粗鬆症の診断一致度は,中等度の一致率を呈しており,臨床的有用性が期待された.いずれにしてもpQCTによる骨塩定量は海綿骨BMDと皮質骨BMDについての情報を与えてくれるユニークな方法であることが示された.  (平成11年4月8日受理)
著者名
今井 義之
25
1
25-33
DOI
10.11482/KMJ-J25(1)025-033.1999.pdf

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