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良性胆管狭窄に対する新しい手術術式 ―乳頭括約筋温存血管柄付き虫垂間置術―

 良性胆管狭窄の手術として,一般的には,胆管空腸Roux-Y吻合術がこれまで広く行われてきたが,十二指腸乳頭括約筋の機能の消失による逆行性の胆管炎と再狭窄,さらには胃酸分泌の亢進による消化性潰瘍の発生が問題とされている.そこで,これらの問題点を解決すべく十二指腸乳頭機能を温存した胆道再建の新しい術式を考案した.体重10~15 kgの成犬を使用し,虫垂を動静脈柄を付けて基部で切離し遊離血管柄付虫垂を作成した後,総胆管を中央部で約lcm切除した.切離した虫垂を肝側胆管と十二指腸側胆管の間でそれぞれ端々吻合を行い間置し,さらに虫垂動静脈を左胃動静脈分枝と端々吻合した.長期生存した5頭を犠牲解剖したところ,3頭は移植虫垂は確認できず,移植部位胆管は胆嚢と瘻孔形成を来していた.しかし2頭は移植虫垂が確認され,造影では,胆嚢との瘻孔形成はなく,吻合部狭窄や残存させた胆嚢の変化も乏しくかつ,肝内胆管の拡張も見られず,十二指腸乳頭からの造影剤の流出も良好であった.生化学的検査では,胆道系酵素の上昇が見られたが,総ビリルビン値は正常範囲内であった.病理学的には,有茎虫垂粘膜上皮に萎縮傾向はなく,胆管粘膜との移行も良好で,肝と膵,ならびに胆嚢上皮と胆管上皮に炎症所見は見られなかった.さらに,消化性潰瘍も認められなかった. また胆管空腸Roux-Y吻合術をコントロール群として作成し5匹が長期生存を示した.血液生化学検査では虫垂間置群と有意差を認めなかった.造影では,胆管空腸吻合部に狭窄はなかった.病理学的には,胆管上皮に炎症細胞の浸潤が見られ,さらに肝臓は上行性胆管炎像を示し,一部に微小肝膿瘍像を認めた.なお消化性潰瘍は認められなかった. 十二指腸乳頭括約筋を温存する胆道再建術としての血管柄付虫垂間置術は,代用胆管としての機能を果たすものと考えられ,管腔器官の再建術として新しい可能性を示すものと考えられた.                          (平成12年10月18日受理)
著者名
小沼 英史
26
4
249-258

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