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Online edition:ISSN 2758-089X

マウス胎子における嗅上皮の発達―走査電顕による観察

 マウス胎子の嗅上皮の発達を明らかにするために,胎生12日から生後2日のマウス嗅部を用いて,特に嗅小胞の形態と分布に着目し,鼻中隔側,天蓋部および外側の嗅上皮を走査電顕で観察した.嗅上皮の発達はStage ⅠからStage Vの5段階に区別できる。StageⅠは嗅小胞が全くみられない状態.Stage Ⅱは大小不同の少数の嗅小胞が孤立性に分布し,短い嗅線毛がみられる.Stage Ⅲは3個から4伝の嗅小胞がグループ化して出現する時期.Stage IVでは嗅小胞が少なくなり,再び孤立化し嗅線毛も長くなる.Stage Vは孤立化した嗅小砲から複数本の嗅線毛が長く伸びる.胎生期の外側嗅上皮では胎生12日でStage Ⅰとなり,胎生16日がStage Ivに対応する.鼻中隔側の嗅上皮では胎生12日がStage Ⅱに対応し,胎生16日でStage Vとなる.すなわち,鼻中隔側嗅上皮の方が外側嗅上皮に比べて胎齢でおよそI F1早く発達する.賠生14日の嗅上皮では,嗅小胞の数は昴中隔側に比べ外側壁に1.5から2倍と有意に多い(P<0,01).さらに天蓋部嗅上皮は鼻中隔側嗅上皮よりも0,5から1日早く発達する.嗅上皮の発達は鼻腔上部の区域で均一に進行するのではなく,部位差がみられる.すなわち天蓋域が'最も早く,外側域が最も遅いことが明らかとなった.嗅上皮の発生における嗅小抱数の変化ならびに嗅小胞の分布様式の変化は,嗅上皮中に発生するアポトーシスが関与する可能性が示唆された.(平成12年10月3日受理)
著者名
森 幸威
26
4
211-221
DOI
10.11482/KMJ-J26(4)211-221.2000.pdf

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