h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

MRAが診断に有用であった肺底動脈体動脈起始症の2例

 近年magnetic resonance imaging (MRI),ならびにmagnetic resonance angiography(MRA)の撮像技術の進歩により,血管の走行や解剖学的異常が動脈造影とほぼ同様の精度で非侵襲性に描出できるようになった.また,高速撮像法とMRI用造影剤の急速静注法の導入により血行動態を経時的に観察評価できるようにまでなっている. 今回我々は,肺底動脈体動脈起始症2例のMRI,ならびにMRAを施行することにより病変部に流入する異常動脈と,その起始する血管を描出することができ,血管造影検査と同等の所見を得ることができた. 第一の症例は15歳の健康な男性.左前胸部血管性雑音を指摘され,胸部造影CT上,左下肺野に血管性腫瘍が認められ,肺動静脈瘻や肺分画症が疑われた.術前にMRAならびに血管造影検査が施行され,ともに胸部大動脈左側から分枝する異常血管と,それが左肺底区に分布している所見が得られた.肺底動脈体動脈起始症の診断で,左下葉切除術と異常動脈根部結紮術が施行された. 第二の症例は61歳の男性で,潰瘍性大腸炎と,ピリン系薬剤およびそばアレルギーの既往がある.胸部単純写真にて左肺野に異常陰影を指摘され,胸部造影CTにて異常血管と左下肺野に血管性腫瘤が認められた. MRAを施行したところ,腹部大動脈から分枝する拡張した異常血管が,横隔膜を貫き左肺底区に分布している所見が得られた.この症例についても,肺底動脈体動脈起始症と診断された.        (平成11年12月20日受理)
著者名
釋舎 竜司,他
26
1
25-31
DOI
10.11482/KMJ-J26(1)025-031.2000.pdf

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