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Online edition:ISSN 2758-089X

Bipolar 型人工骨頭置換術の臨床的研究

 Bipolar型人工骨頭置換術の変形性股関節症に対する適応は現在,否定的な意見が多い.さらに,外骨頭の摺動角が通常の人工股関節全置換よりも小さく大腿側インプラントの頚部に衝突が発生しやすく,著明なポリエチレンの摩耗が生じることが問題となっている.しかし,我々は外骨頭の生体親和性が優れている点に着目してセラミック外骨頭を便用してきた.この人工骨頭置換術で良好な成績が得られているので報告する.5年以上経過観察し得た19関節(変形性股関節症14関節,大腿骨頭壊死症5関節)を対象とした.術前JOAスコアーは平均44.4点が最終追跡時平均84.7点に有意に改善した.80点以上の良好群が73.7%を占めていた.成績不良や移動,緩み等を理由に再置換術を施行されたものはなかった.術後のX線像では14関節(73.7%)に外骨頭の移動がみられた.最終調査時,上方移動量は平均4.1 mm, 水平移動量は平均2.5mmであった.8関節で5mm以上の水平あるいは垂直方向の移動を認めた.人工骨頭周囲の放射線透過性変化は臼蓋側は1関節のみにみられた.大腿側の放射線透過性変化は6関節(31.6%)にみられた.感染,脱臼,人工骨頭の破損などはみらなかった.我々が使用したアルミナ・セラミック製骨頭は外骨頭外縁にポリエチレンのはみだしがなくこの点が有利に作用した.我々は外骨頭を脱臼位ではなく原臼位に設置すること,可及的広範囲に骨性被覆が得ること,寛骨臼内壁を5mm以上残すことを原則とし,気動式臼蓋リーマーを用いて臼蓋を掘削した.臼蓋形成不全が強い症例では骨移植等の臼蓋形成術が必要であるが,スクリューによる固定の際,外骨頭と直接接触する危険性を考慮し,移植骨を臼蓋の外にまたがるL状に採型し,スクリュー固定を行うよう工夫している. Bipolar型に随伴する問題のうち骨溶解と,ポリエチレン摩耗粉の発生はいずれも外骨頭と頚部の衝突によって引き起こされると考えられるが,我々のシステムはこれらの問題の発生を減少できたと考える.(平成10年10月26日受理.)
著者名
林 健太郎
24
4
221-230
DOI
10.11482/KMJ24(4)221-230.1998.pdf

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