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エストロゲン受容体陽性乳癌細胞における抗エストロゲン薬と mTOR 阻害薬エベロリムスの細胞増殖及び 癌幹細胞制御に対する効果

 乳癌を含め多くの固形腫瘍において,癌幹細胞(CSC)が治療抵抗性や再発の原因となることが示唆されている.一方,エストロゲン感受性乳癌におけるCSC の制御機構に関する研究は少ない.そこで,エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌細胞におけるエストロゲンや抗エストロゲン薬(抗E 薬)の細胞増殖やCSC 制御に与える影響について検討した.さらに,内分泌療法抵抗性乳癌に有効性が期待されているmTOR 阻害薬エベロリムス(EVE)と抗E 薬との併用効果も検討した.ER 陽性乳癌の実験モデルとして,エストロゲン高感受性(HS)のMCF-7,T-47D 乳癌細胞株,エストロゲン低感受性(LS)のKPL-1,KPL-3C 乳癌細胞株を用いた.薬剤は,17β-estradiol(E2),4-hydroxytamoxifen(4-OHT),fulvestrant(FUL),EVE を用い, 細胞増殖,細胞周期,アポトーシス,CSC 比率に与える影響を検討した.CSC の同定には,CD44/CD24/EpCAM 抗体を用いたフローサイトメトリー法及びmammosphere assay を用いた.ER-α,PgRおよびER 関連転写因子(GATA3等)の発現は免疫細胞化学的に検討した.結果として1)LS 細胞株では,PgR の発現が認められなかった.それ以外のER 関連因子は,HS 細胞株,LS 細胞株ともに高発現が認められた.2)HS 細胞株はLS 細胞株に比べ,E2による細胞増殖の促進効果,CSC 比率の増加効果が,ともにより顕著であった.3)HS 細胞株はLS 細胞株に比べ,抗E 薬による細胞増殖の抑制効果,CSC 比率の低下効果がより顕著であった.4)EVE と抗E 薬の併用は,LS 細胞株において相加的な細胞増殖抑制効果を示した.両薬の併用により,一部の細胞株ではCSC 比率の減少効果が増強された.以上の結果は,LS 乳癌において,抗E 薬の増殖抑制効果ばかりでなく,CSC 比率の低下効果も減弱していることを示唆している.抗E 薬抵抗性獲得のメカニズムの一つとして,CSC 制御機構の異常が関わっている可能性がある.また,一部の乳癌細胞株において,抗E 薬とEVE 併用の結果から,内分泌抵抗性乳癌におけるEVE の有用性が示唆された. (平成25年2月12日受理)
著者名
山下 哲正,他
39
3
65-79

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