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肩峰下滑液包の形態学的研究 -鋳型作製による三次元的検討-

肩関節は,狭義の肩関節である肩甲上腕関節と機能的関節である第2肩関節の2つで構成されている.また,肩関節は大きな可動域を持っていて重力に対する骨性支持がないため,肩関節とその周囲に及ぶ様々な痛みを引き起こすことがしばしばある.本研究の目的は,肩関節の痛みに関与していると考えられ第2肩関節に滑動性を与えている肩峰下滑液包が,解剖学的にどのような形態をしているのかを,肩峰下滑液包の鋳型を作製して三次元的に詳しく観察すると共に,肩峰下滑液包の拡がりが周囲の組織と何らかの関連性を持つかどうかを調べることである.川崎医科大学解剖学教室の屍体33体(66肩関節)のうち生前に肩関節に外傷歴がなく,X線学的に上腕骨骨頭と肩峰が接しているものを除いた31体(61肩関節)を対象とした.各々の肩関節を肩甲骨と上腕骨と鎖骨を一塊として取り出し,X線学的に肩峰骨頭間距離Acromiohumeral interval (以下AHIと略す),肩峰の幅,上腕骨大結節の硬化像の長さ,肩甲骨内縁に対する関節窩の傾斜角および肩峰の傾斜角を測定した.その後,造影剤と専用のシンナーを1:1で混合したsilicon gum(信越化学社製KE24)を,X線透視下に肩峰下滑液包に注入した.注入圧は120mm Hgと一定になるように設定した.24時間後に肩峰下滑液包の鋳型を取り出し重量,表面積,肩峰下面の前外側を基準点とした鋳型の大きさ,棘上筋の前後縁におけるsilicon gum鋳型の厚さと肩峰前外側部の鋳型の厚さを測定した.肩峰下滑液包を石野による分類法1)に従って分類すると肩峰下のみに存在するType Ⅰは13肩関節(21%),単房性で肩峰下にあり上腕骨大結節まで覆っているType Ⅱは29肩関節(48%),薄い隔壁により肩峰下と三角筋下とに区別できるTypeⅢは6肩関節(10%),肩峰下にあり上腕骨大結節と小結節を覆っているType Ⅳは13肩関節(21%)であった.測定項目の中でType別に有意差を認めたものは,右側鋳型の重量(以下右重量と略す),右側鋳型の表面積(以下右表面積と略す),左側鋳型の表面積(以下左表面積と略す)であった.また,各測定項目間の相関性は右重量と右表面積,右AHIのそれぞれ3つの間に認めた.肩峰下滑液包の鋳型はType Ⅱが最も多かった.鋳型の重量や表面積とX線学的AHIが相関を示した.鋳型とX線画像という対象の違うものの測定結果が相関を示したことは興味あることであるが,今回対象とした屍体は腱板全層断裂のないものであり今後の検討が必要と思われる.                       (平成8年10月23日採用)
著者名
布施 謙三
22
4
261-272

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