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Online edition:ISSN 2758-089X

思春期,青年期における広汎性発達障害を背景にもつ適応障害患者の臨床的特徴

思春期, 青年期の適応障害患者において広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders,PDD) を基盤にもつ患者の割合を検討し,その場合,どのような臨床的特徴があるかを調査し,PDD の有無に関連する要因について検討した.DSM- Ⅳ -TR (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fourth Edition, Text Revision) によって適応障害と診断された12歳以上30歳以下の患者58名を対象とし,以下の自記式質問紙を用いて臨床的特徴を評価した.精神症状の評価は,日本語版パラノイアチェックリスト(JPC:Japanese version of Paranoia Checklist),思春期の精神病様体験(PLEs:Psychotic Like Experiences),精神症状評価尺度(SCL-90-R :Symptom Checklist-90-Revised) を用いた.PDD の評価については,詳細な養育歴の聴取と,患者に対して自閉症スペクトラム指数日本版(AQ-J:Autism Spectrum Quotient - Japanese Version) を用いて,養育者に対しては,自閉症スクリーニング質問紙(ASQ:Autism Screening Questionnaire) を用いて総合的に判断し評価した. その結果,1) 58名のうち,PDD と診断されたのは,32名(55.1%) であった.2)AQ-J については,PDD の有無に関してコミュニケーションが有意な関連性を示した.3) JPC については,PDD 群が,非PDD 群と比較して総得点,確信度において有意に高い結果となった.PDD の有無に関して,確信度が有意に関連していた.4) SCL-90-R についてはPDD 群では,恐怖症性不安,妄想,精神病症状,強迫症状,対人過敏,抑うつ,不安,その他の8項目において非PDD 群に比較して有意に高かった.PDD の有無に関して強迫症状が有意に関連していた.5) 各質問紙の総得点とPDDとの関連を見ると,JPC の総得点のみがPDD と有意な関連性を示した. 思春期,青年期の適応障害患者では,PDD を基盤にもつと,被害妄想や,強迫症状など様々な精神症状を自覚する可能性があり,JPC など質問紙も併用して,PDD の存在を念頭において診療を行う必要があることが示唆された.doi:10.11482/KMJ-J40(1)1 (平成25年9月20日受理)
著者名
中村 尚史
40
1
1-11
DOI
10.11482/KMJ-J40(1)1

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