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広汎性発達障害を基盤にもつ抑うつ状態の臨床的特徴

 抑うつ状態を伴う患者において広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders;PDD)がどの程度伴い,その場合どのような臨床的特徴があるかについて検討した.DSM-Ⅳ-TR(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition, Text Revision) によって気分障害,適応障害と診断された18歳以上50歳未満の患者のうち,ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Rating Scale for Depression; HAM-D)において,軽度から中等度の抑うつ状態にある64名を対象として調査した.精神症状の評価はHAM-D,ベックうつ病評価尺度(BeckDepression Inventory; BDI)と精神症状評価尺度(Symptom Checklist-90-Revised; SCL-90-R)を用い,また,PDD の評価は養育者からの発達歴と自己記入式質問紙を用いて評価した. その結果,1)64名のうち,PDD と診断されたのは23名(35.9%)であった.2)HAM-D の総得点において,PDD 群と非PDD 群を比較して,有意な差は認めなかったが,BDI の総得点において,PDD 群が31.3±11,非PDD 群が24±9.9であり,有意にPDD 群の得点が高かった.3)BDI の下位項目では,『悲哀感』,『落涙』,『無価値観』,『食欲の変化』の4項目が,PDD 群で有意に高かった.4)SCL-90-R では,PDD 群が,『強迫症状』と『対人過敏性』と『妄想様観念』の項目の得点が有意に高かった.5)PDD 群のAQ-J の得点では,『注意の切り替え』と『コミュニケーション』の項目で,患者の得点が家族よりも有意に高かった. 医師が客観的に評価するHAM-D に差が認められずに,患者が主観的に評価するBDI が高いということが,PDD 群の抑うつ状態の特徴と考えた. その原因として,患者が内的な体験を人と比較したり,時間経過において比較するのが困難なことや,「全か無か」という考え方などが関与している可能性を考えた.また,抑うつ状態は同程度でも,患者の苦痛感が強い可能性も考えた. PDD 群においては,社会性やコミュニケーションの障害のため,同世代集団から拒絶されたり,孤立したりするという否定的な体験が蓄積しやすく,それがBDI の『無価値観』やSCL-90-R の『対人過敏性』や『妄想様観念』を高めているのではないかと考えた.(平成24年9月25日受理)
著者名
和迩 大樹
38
4
189-199

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