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Online edition:ISSN 2758-089X

ウサギパイエル板のM細胞におけるMycobacterium intracellulareの取り込みに関する形態学的研究

腸管は有害な微生物や腸管内に存在する様々な抗原に対して防御機構を有しており,この中でパイエル板のリンパ被蓋上皮(follicle associated epithelium : FAE)内のM細胞は,抗原認識の侵入門戸として大きな役割を担っている.すなわち,M細胞は腸管から種々の抗原を取り込み,内包する免疫担当細胞にその情報を提示している.近年,エイズなどの,免疫不全或いは抑制状態の患者に, Mycobacterium avium intracellulare complex (MAC)が日和見感染症として,重篤な腹痛を伴う吸収不良に関係した腸管感染症として成立することが報告されている.そこで,筆者は, MACの腸管内での動態を検討する目的で,ウサギを用いて腸管内に投与されたMycobacterium intracellulare (JCM6384株)と腸管,特にパイエル板を中心に光顕・電顕レベルで観察を行った.その結果,投与後5時間には,光顕レベルではパイエル板のリンパ被蓋上皮,及びその基底膜下のみにチール・ニールセン染色で赤紫色に染色される菌体を認めた.電顕的には,M細胞にのみ取り込まれ,その細胞質内から内包するリンパ球やマクロファージにまで輸送される一連の像を確認した.同時に,ホルマリン処理を行った死菌を同様な手技で観察したが,生菌の場合と差異を認めず,このことはMACのワクチンの作製が可能であることを示唆しているものと考えられた.以上の成績より,日和見感染症としてのMACの腸管感染の成立に,抗原の認識機構の門戸であるM細胞が関与している可能性が示唆された.     (平成7年10月25日採用)
著者名
山内 三枝
21
4
275-285
DOI
10.11482/KMJ-J21(4)275

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