h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

糖尿病合併症におけるトロンボモジュリン測定の有用性

トロンボモジュリン(thrombomodulin,以下, TM)は血管内皮細胞膜上におもに存在する血管内抗凝固蛋白質である.糖尿病慢性合併症の存在下では,血管内皮細胞の障害が発生し,血中にTMが増加するため,糖尿病合併症の程度の指標として最近注目されるようになった.今回,著者らは血中TMをインスリン非依存型糖尿病患者(NIDDM)にて測定し,その有用性を検討した.TMの測定は酵素抗体法を用いた. HbAlcと血中TMの比較では,両者には有意な相関性は認めなかった.次に糖尿病性合併症それぞれについての検討を行った.腎症を表す尿中微量アルブミン,蓄尿中蛋白と血中TMとのそれぞれの相関係数はr=0.695, r=0.730と,ともに有意な正の相関を示した.網膜症との関連では,糖尿病性網膜症の増悪進展により,血中TMは高値を示す傾向を認めた.糖尿病性神経症ではMCV, SCV, QTCともに,それぞれ両者に有意な相関性は認めなかった.糖尿病性合併症を有しない群と糖尿病性腎症,網膜症,神経症の三大合併症を有する血中TMの比較では,それぞれ2.7±0.6 ng/ml, 6.7±3.8 ng/ml であり,合併症を有する群で有意な高値を示した.糖尿病性合併症における死因は血管合併症が多いと報告されている.このため血中TMを測定することは,糖尿病患者の経過観察に今後重要な検査項目の一つになると考えられる.  (平成5年1月8日採用)
著者名
津島 公,他
19
1
19-24
DOI
10.11482/KMJ19(1)19-24.1993.pdf

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