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α受容体を介する冠血管収縮は心内膜側血流に利するか―slosh現象との関連について―

拡張期優位に心内膜側心筋に流入した冠動脈血の一部は,心筋収縮により収縮期逆流として心外膜側へ搾り出される(slosh現象).このslosh現象は,心筋内血流分布を規定する重要な因子である.一方,運動時の交感神経活性,特にα受容体刺激を介する冠動脈収縮は,心筋内血流の均一性の維持に重要であり,心内膜側から心外膜側への血液の移動(transmural steal)を減少させて心内膜側血流の維持に寄与している.本研究では,α受容体刺激の心筋内血流動態,特にslosh現象に及ぼす影響について, anti-transmural steal現象と関連付けながら検討した.麻酔開胸犬(n=12)を用いて, 20MHz超音波ドップラ血流計を用いて左冠動脈中隔枝の血流を計測することにより,心筋内冠動脈血流パターンを評価した.α受容体刺激の効果をみるため,ノルエピネフリン持続静注状態で,α受容体遮断を行い,その前後での血流を比較した.α受容体遮断には,フェノキシベンザミンを用い,大動脈のバンディングにより冠灌流圧はα受容体遮断前後で一致させた.α受容体を遮断することにより,収縮期逆流は増加し,収縮期逆流の拡張期流入血流に対する割合(slosh率)も増加した.なお,α受容体遮断前後で左室のmaximum dP/dtに変化は認められなかった.ノルエピネフリン投与下にα受容体を遮断すると収縮期逆流が増大する機序としては,α受容体遮断により心外膜側よりの比較的太い冠動脈の拡張を生じ,心筋内冠動脈から心外膜側へ血液が移動した(transmural-steal)と考えられた.以上より,α受容体刺激は収縮期逆流を減少させることにより,slosh現象を抑制し,有効な心内膜側血流の維持に寄与し得ることが示された.           (平成5年10月26日採用)
著者名
森田 浩一
19
4
347-354

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