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Online edition:ISSN 2758-089X

わが国における赤血球膜異常症の病態一臨床的,電顕学的,生化学的研究-

溶血性貧血諸疾患143例を検索対象とし,赤血球形態,膜蛋白,膜脂質,Na輪送能などの項目につき解析した.検索症例の中では遺伝性球状赤血球症(HS)の頻度が最も高かった(55例; 38.5%).HSと遺伝性楕円赤血球症(HE)については,検索前後の診断がよく一致していたが,遺伝性有口赤血球症(HSt.)に関しては診断不能例が多く,末梢血塗抹標本による形態診断での限界を示唆しているものと思われた.HS 55例のband 3含有量の平均値は健常人と差はみられなかったが,一部の症例でband3の含有量が低下(正常の20~30%減)しており,同時にband 4.2の含有量も低下していた. Band 3の含有量と総脂質量との間には明らかな相関は認められず,このことはband3含有量低下と膜脂質量低下が異なる機序によることを示唆していると思われた.HEに関しては,16例(8家系)中,13例(6家系)がband 4. 1部分欠損を伴っていた(家系でみると全HEの75%).これらの症例では, band 4. 1の含有量は正常の約70%であり,特にband 4. 1aのみが減少していた. Band 4. 1部分欠損症例の臨床像,生化学所見は比較的均一であった.                     (平成5年10月28日採用)
著者名
井上 孝文
19
4
355-369
DOI
10.11482/KMJ19(4)355-369.1993

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