h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

後縦靱帯・脊髄硬膜のelastinに関する形態学的,生化学的研究

解剖屍体より採取した後縦靭帯,脊髄硬膜のelastinに関する形態学的,生化学的研究を行った.後縦靭帯は,頸椎部,上位胸椎部,下位胸椎部,腰椎部の4部位に分け,脊髄硬膜はさらに腹側と背側とで8部位に分けて透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った.またそれぞれの部位におけるelastin含有率を測定した.後縦靭帯のelastinは, microfibrilに取り囲まれた直径0.8~1.0μmの無構造物質として観察され,多くが頭尾方向にほぼ平行に近い配列を示していた.脊髄硬膜のelastinは,microfibrilに取り囲まれた直径0.5~1.0μmの無構造物質として観察され,後縦靭帯と比べやや小型のものが多く,多方向に配列する傾向が認められた.後縦靭帯のelastin含有率は平均7.6%,脊髄硬膜のelastin含有率は腹側で平均7.1%,背側で平均13.0%であった.部位別では,頸椎部でのelastin含有率が低く, collagen含有率が高い傾向にあり,また下位胸椎部ではelastin含有率が高かった.脊髄硬膜のelastin含有率については,いずれの部位でも背側が腹側に比し約1.5~2.0倍の値を示し, collagen含有率では背側で低値を示した.後縦靭帯,脊髄硬膜のelastinのアミノ酸組成は,黄色靭帯,項靭帯などの脊柱靭帯組織と類似していた.                       (平成3年2月25日採用)
著者名
中川 洋
17
1
47-59
DOI
10.11482/KMJ17(1)47-59.1991.pdf

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