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Online edition:ISSN 2758-089X

実験的ネフローゼマウスにおける糸球体の電子顕微鏡組織化学的研究

腎糸球体係蹄上皮細胞(podocyte)は,係蹄毛細血管基底膜の保持の役割を担っている.そこで著者は実験的に N.N'-DABを腹腔内に注射してマウスにネフローゼを起こさせ,正常動物とともにpodocyte外被の状態を超組織化学的に研究した. N.N'-DABは体重10g当たり12.5 mgを腹腔内に注射した.投与後15週目から尿蛋白が出現しはじめ,24週目には多くの動物に尿蛋白が見られるようになった.組織の光顕所見では,投与後24週目には糸球体に部分的な硬化像が見られた.またコントロール動物の組織にコロイド鉄染色を施し電顕で観察すると, podocyte外被にコロイド鉄微粒子の沈着を認めたが,ニウラミニダ一ゼ消化後ではこれが消失した.実験動物ではコロイド鉄微粒子の沈着は部分的に減少していた.そしてニウラミニダーゼ消化後ではコロイド鉄の沈着は減少するが一部にニウラミニダーゼ消化抵抗してコロイド鉄に反応する部分が見られた.一方,コンドロイチナーゼABCやヒアルロニダーゼによる消化では,消化前後にコロイド鉄の沈着に差を認めなかった.このことはネフローゼ状態のマウスにおいては, podocyteのムコ多糖にとむ外被に変化が生じ,違う種類のムコ多糖に変わっていることを示唆していると思われた.(平成3年10月30日採用)
著者名
山田 昌彦
17
4
335-343
DOI
10.11482/KMJ17(4)335-343.1991.pdf

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