h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

制限酵素分析による異常血色素の構造解析

DNAの制限酵素分析はAbn Hb の構造解析に有効な手段となっており,Hb Takamatsu[β120(GH3)Lys→Gln], Hb Riyadh[β120(GH3)Lys→Asn]とHb DLos Angeles [β121 (GH 4) Glu→Gln]の3種のAbn Hb の構造解析が試みられた.Hb Takamatsu の保因者のDNAを制限酵素Bal Ⅰ で消化し,32P-ラベルしたβIVS 2probeとhybridizeすると,正常人にみられる2.1 kb のfragment band のほかに,1. 5 kb の新しいfragment band が現れた.これはこのAbn Hbのアミノ酸置換β120Lys→Glnによるアミノ酸コドンのAAA(Lys)からCAA(Gln)への変換の結果,Bal Ⅰ の切断部位(5'-TGG↓CCA-3')が新生したことを示すものであった.しかし,同位置のアミノ酸置換をもつHb Riyadh ではLys→Asnの置換のためBal Ⅰの切断部位の新生はみられず,正常と同じDNA fragment pattern を示した.Hb D Los Angeles 保因者からのDNAのEcoRI/βIVS2の処理では,正常な5.2kbのfragment bandのほかに8.8kbの大きなfragment band が現れた.アミノ酸置換はEco RI の作用部位の消失を起こす領域での塩基置換によるものであった.(昭和63年12月6日採用)
著者名
原野 昭雄,他
15
1
102-108
DOI
10.11482/KMJ-J15(1)102

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