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Online edition:ISSN 2758-089X

カルシウム拮抗薬アゼルニジピンの3T3-L1脂肪細胞におけるインスリン感受性改善効果

 長時間作用型ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬アゼルニジピン(AZE)は,ヒトや実験動物において,降圧効果に加えて,アディポサイトカイン分泌改善,インスリン抵抗性改善などの効果を示すと報告されているが,その機序は未だ不明である.本研究では,培養3T3-L1脂肪細胞を用いて,脂肪細胞のインスリン感受性やアディポネクチン分泌に対するAZE の効果を解析し,その分子メカニズムについて検討を加えた. 3T3-L1脂肪細胞をAZE(50 nM)で24時間刺激すると,インスリン反応性ブドウ糖輸送能および脂肪細胞からのアディポネクチン分泌の有意な増加を認めたが,脂肪細胞分化や脂肪細胞分化関連遺伝子発現には影響はみられず,PPARγ活性化を介さない経路によるものであることが示唆された.また,これらの効果は,対照薬として用いたニフェジピン(NIF)(100 nM)による処理では認められなかったことより,ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬のclass effect ではなく,AZE に固有の性質であると考えられた.3T3-L1脂肪細胞のAZE 処理によるアディポサイトカイン遺伝子発現を解析したところ,アディポネクチン遺伝子発現の有意な増加を確認したが,レプチン,レジスチン,MCP-1,TNF-αの発現に有意な影響は認めなかった.一方、酸化ストレス関連の遺伝子発現解析において,NADPH oxidase subunit であるp22phox,p67phox 遺伝子の発現は有意に低下し,抗酸化酵素であるSOD1やCatalase の遺伝子発現が有意に増加していた.以上の結果より、AZE の脂肪細胞におけるインスリン感受性増強,アディポネクチン分泌増加作用には,抗酸化作用を介したアディポネクチン遺伝子発現亢進が関連している可能性が示唆された.(平成23年10月24日受理)
著者名
辰巳 文則
37
4
211-222
DOI
10.11482/Kawasaki_Igakkaishi37(4)211-222.2011.pdf

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