h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

放射線治療により著明な縮小がみられたCraniopharyngiomaの1例

craniopharyngiomaに放射線治療が有効であるとの意見が多いが,それは主に腫瘍の増大を阻止する効果があるというもので,腫瘍を縮小させたとの報告は非常に少ない.放射線治療後7年間の経過のうちに腫瘍の著明な縮小を認め,その過程をCTにて追跡しえたcraniopharyngioma成人例を報告した.症例は37歳男性.4ヵ月前から頭痛,視力低下,性欲減退を自覚し当科を受診した.視神経萎縮と両耳側半盲を認めCTにてトルコ鞍上部腫瘍と診断し, 1980年11月開頭手術を行った.腫瘍は視交叉部の後方に存在し充実性で硬く易出血性で更に視交叉部,視床下部に強く癒着していたため部分切除にとどまった.組織診断はcraniopharyngiomaであった.術後のCTにて直径24 mmの残存腫瘍を認め,60Co照射を56日間で計3050 rads 行った.6ヵ月後の1981年7月のCTで腫瘍は直径1 6 mm に縮小し,視力も正常に復していた.その後も腫瘍の縮小は進み,6年後の1987月3月には直径11 mm までに縮小し,7年後の1988月7月現在まで再発を認めていない.以上の結果から放射線治療にはcraniopharyngioma組織を破壊する力があると考えられ,全摘手術が困難な場合,無理な手術操作は避けて術後放射線治療を行うべきであると考えられた.(昭和63年7月29日採用)
著者名
松本 章傅,他
14
4
678-683
DOI
10.11482/KMJ-J14(4)678

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