h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

膵Serous Cystadenoma の1例

膵嚢胞性疾患はまれな疾患で,そのほとんどを,仮性嚢胞が占め,膵嚢胞腺腫は非常にまれな疾患である.膵嚢胞腺腫は,一般に漿液性嚢胞腺腫,粘液性嚢胞腺腫の二型に分類され,前者は, malignant potential のない真性嚢胞で,後者は,悪性化の傾向があるとされている.我々は,膵漿液性嚢胞腺腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は,77歳 女性.約10ヵ月前に腹部腫瘤に気付き,約1ヵ月前より黄疸に気付き,1987年2月12日入院した.右の上腹部に鷲卵大,弾性硬,球形の腫瘤を触知した.CTでは膵頭部に,造影剤で濃染する明らかな被膜を有する,多房性の嚢胞性腫瘤を認めた.上腸間膜動脈造影では,腫瘍濃染像を認めたが,明らかな血管侵食像は認められなかった.経皮経肝胆管ドレナージによる減黄後,幽門温存膵頭十二指腸切除術, Child法による再建術を行った.摘出標本の腫瘍部は,肉眼的に,厚い被膜を有するスポンジ状の腫瘍で,正常膵とは,明瞭に境界され,病理学的には悪性所見はなく膵漿液性嚢胞腺腫と診断した.(昭和63年9月20日採用)
著者名
藤森 恭孝,他
14
4
690-694
DOI
10.11482/KMJ-J14(4)690

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