h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

通常型膵癌進展におけるFibroblast activation protein α 発現に関する臨床病理学的検討

通常型膵癌(以下膵癌)は極めて予後不良な癌であり,病理学的には癌周囲に豊富な間質を伴う。固形癌の間質は癌の増殖,浸潤,転移や抗癌剤に対する抵抗性獲得に重要な役割を果たし,なかでも癌関連線維芽細胞(Carcinoma associated fibroblast:CAF)と呼ばれる癌間質の活性化線維芽細胞は癌進展に深く関与している.今回我々は膵癌組織のCAF に発現するFibroblastactivation protein α(以下FAP)の臨床病理学的な意義について検討した.対象は2006年4月から2010年4月の間に当院で切除した膵癌症例30例である.抗 FAP 抗体を用いて免疫組織学的検討を行った.FAP は主として癌周囲の間質に検出され,一部には膵癌細胞にも認められたが,今回の検討ではFAP 陽性の線維芽細胞をCAF とみなし,線維芽細胞のFAP 発現強度と臨床病理学的因子を比較検討した.FAP 陽性線維芽細胞は28/30例(93%)に認められた.FAP 発現強度の内訳は,1+:8例,2+:16 例,3+:4 例であった.陰性/ 弱陽性群(陰性・1+)と強陽性群(2+・3+)での生存率を比較したところ,それぞれの全生存日数の中央値は862日と352日であり強陽性群の生存率は有意に低かった(P <0.05).またFAP の発現強度と膵癌細胞の分化度は有意な関連性を示し,FAP の発現が強いほど有意に低分化であった.さらに多変量解析では FAP の強陽性は膵癌患者の予後を規定する独立因子の一つであった.以上の成績から膵癌組織の線維芽細胞におけるFAP の発現は膵癌患者の予後を規定する重要なバイオマーカーであることが明らかとなり,膵癌細胞の分化度と相関することを初めて明らかにした.doi:10.11482/KMJ-J41(1)9 (平成26年10月11日受理)
著者名
河瀬 智哉,他
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9-17
DOI
10.11482/KMJ-J41(1)9

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