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Cyclin dependent kinase inhibitor による神経前駆細胞の分化誘導と脳形成

大脳皮質は知覚,認知,思考等の高次機能を担う中枢である.哺乳類では大脳皮質は 6 層構造をなし,それぞれの層では機能的,形態的に類似した細胞集団が異なる領域からの投射をやり取りしている.神経細胞およびグリア細胞は,胎生期から生後にかけて神経前駆細胞( Neuralprogenitor cell,NPC )から分裂し産生される.NPC は時期に応じて神経細胞,続いてグリア細胞へ分化し,最終的な脳の構造が完成する.NPC から分化する細胞運命の決定には,細胞分裂を中止して分化を始める機構が必要であり,その中でも Cyclin dependent kinase inhibitors( CKIs )の働きが注目されている.今回我々はこの CKIs のひとつである p18 遺伝子を用いて胎児マウス脳の発生に与える影響を解析した. 方法としては胎生 13~17 日目( E13 - 17 )のマウス胎児脳に p18 遺伝子を子宮内エレクトロポレーション法によって強制発現させ,その後に脳組織内での分布を観察した.また Cre-LoxP を用いた蛍光蛋白発現システムで個々の細胞形態の立体再構築を行った. その結果,p18 遺伝子発現群は コントロール群に比べて多く脳室面側に留まり,特にE14, 15において顕著に認められた.更に遺伝子導入した細胞において分化後の形態を観察したところ,生後脳において p18 遺伝子発現群ではアストロサイトの形態をした細胞が増えており,免疫組織学的染色からもこれらの細胞がアストロサイトであることが示唆された.この細胞は E13~ E17 いずれの時期においても増加していたが,特に E14,15 で顕著に認めたことから,この時期にニューロンの分化からアストロサイトの分化に切り替わる何らかのメカニズムが存在していると考えられた. 今回の研究によって NPC がニューロンへの分化からアストロサイトへの分化に切り替わるメカニズムに CKIs が関与している可能性が示唆された.アストロサイトはグルタミントランスポータの発現により,二次的脳損傷から神経細胞を保護しており,その発生が解明されることで低酸素性虚血性脳症の治療への応用も期待される.doi:10.11482/KMJ-J41(1)83 (平成27年6月22日受理)
著者名
石田 剛,他
41
1
83-96

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