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Online edition:ISSN 2758-089X

FK506(タクロリムス)とミコフェノール・モフェティルを用いたラット四肢同種移植における拒絶反応の検討

 ラット同種四肢移植モデルを用い,FK506とMycophenolate mofetil(MMF)併用下での移植肢各組織の拒絶反応について組織学的に評価し,その有用性について検討した. ACI rat(RT-la)の後肢を,Lewis rat(RT-ll)の後肢に移植した(n=15).術後はFK506 1mg/kg/day,MMF30mg/kg/day を連日投与した.また,Lewis からLewis への同系移植モデルを作成し,コントロール群とした(n=15).両群ともに術後30,60,90日目に5匹ずつ,移植肢の皮膚,筋肉,軟骨,骨をButtemeyer らのrejection grading scale に従って組織学的に評価した. 同種移植肢は肉眼的に壊死を生じたものはなかったが,浮腫を認め,拒絶反応の存在を思わせた.一方,同系移植群では,浮腫はなく,非移植肢とほぼ同等の外観であった.同種移植群の各組織の術後90日でのrejection grading scale は皮膚が0.6,筋肉が0.4,骨が0.4,軟骨が0.3で,meanrejection score は0.43であった. FK506とMMF 併用下での同種移植肢は,免疫抑制剤投与中から各組織には軽度の拒絶反応を認めており,四肢同種移植の臨床応用には慎重を期すべきと考える.(平成23年8月8日受理)
著者名
中村 慎一
37
3
107-115
DOI
10.11482/Kawasaki_Igakkaishi37-3.107-115.2011.pdf

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