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Online edition:ISSN 2758-089X

教室における肺癌症例の検討 ―病期分類,切除率,生存率からみた肺癌手術例の検討―

昭和50年1月から昭和61年1月までの約11年間に当科に入院した原発性肺癌症例は121例で,これらの症例について病期分類,切除率,生存率等について検討を加えた.内訳は,男性88例,女性33例,年齢は22歳から83歳,平均67.0歳で,70歳代は24例(19.8%),80歳代は2例(0.2%)であった.病期分類はIa期32例(26.4%), Ib期8例(6.6%),II期5例(4.1%), III期45例(37.2%), IV期28例(23.1 %)で, III ・ IV 期を合わせると60%以上を占めていた.このうち切除例は78例(64.5%)で,治癒切除例は57例(73.1%)であり,II期症例までは全例治癒切除可能であったが,III期症例は45例のうち治癒切除は11例のみであった. 121症例の組織型は,腺癌は59例(48.8%),類表皮癌は37例(30.6%),小細胞癌は10例(8.3%),大細胞癌は4例(3.3%)であった.全切除例の50%生存期間は36.4ヵ月であったが,病期別に比較するとIa期の5年生存率は約71%であったのに対して,Ib期,II期,III期の50%生存期間はそれぞれ27.5ヵ月, 31.4ヵ月, 24.4ヵ月と,Ia期の生存率は有意に良好で(p<0.05),治癒切除,非治癒切除に分けて比較すると,50%生存期間はそれぞれ46.6ヵ月, 20.4ヵ月で治癒切除可能例において有意に良好であった(p<0.05).また,当院呼吸器内科で非観血的療法をうけた切除不能94例の50%生存期間は約7.5ヵ月であり,切除例の36.4ヵ月と比べ明らかに不良であった.このように生存率は早期症例ほど良好で,肺癌予後を決定する因子としては病期分類が最も重要であり,さらに小細胞癌,III期肺癌に対しても積極的な拡大根治手術により生存率の向上が期待できるものと考えられる.
著者名
野上 厚志,他
13
1
72-77
DOI
10.11482/KMJ-J13(1)72

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