h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

ベンチジン誘導体によるラット腎障害の形態的研究

糸球体基底膜の選択透過性異常の原因として,基底膜合成に関与していると考えられる糸球体上皮細胞の態度が注目される.一方,ラットにN, N'-Diacetylbenzidine (N, N'-DAB)を投与すると,蛋白尿と上皮細胞の特異な病理変化が出現することが知られている.著者は,この上皮細胞の病理変化と蛋白尿の関係を明らかにするためにN, N'-DABをラットの腹腔内に1回または2回投与し,観察した.投与後40日に蛋白尿が出現し始め,100日には多くの個体で蛋白尿が陽性化し, 200日にわたって300 mg/日以上の尿蛋白が持続増強した.形態的には糸球体上皮細胞に空胞状変化が出現し,蛋白尿の程度に伴って係蹄硬化性変化,硝子化巣が出現し,増悪した.推計学的には,上皮細胞の空胞状変化は,蛋白尿の出現に先行していた.このことは糸球体上皮細胞の空胞性病変のなかには,薬剤による原発性の細胞障害によって発現したものがある可能性を示す.
著者名
松谷 拓郎
13
3
279-294
DOI
10.11482/KMJ-J13(3)279

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