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Online edition:ISSN 2758-089X

海綿骨スコアによる骨粗鬆症性椎体骨折の識別能:日本人高齢女性における検討

海綿骨スコア(TBS)は二重エネルギーX 線吸収測定法(DXA)の画像における各画素の濃度変動を表すテクスチャー指標で,骨強度の決定要因の一つである骨微細構造の簡便な評価法として期待されている.本研究では,日本人高齢女性においてTBS と骨粗鬆症性椎体骨折の関係を調査し,TBS の骨折リスク評価における意義を検討した.研究デザインは後ろ向きの症例対照研究で,脆弱性の椎体骨折の既往を持つ65歳以上の女性76名(平均年齢74.8歳)を年齢を一致させた対照例152名と比較した.椎体骨折の有無は単純X 線画像で確認した.骨代謝に影響を及ぼすような既往歴あるいは服薬歴のある症例は検討対象から除外した.腰椎および大腿骨近位部の骨密度はDXA により測定し,TBS は専用の解析ソフト(TBS iNsight . software v2,Medimaps,Geneva,Switzerland)を利用して求めた.各指標の相関係数はピアソンの相関係数,2群間の比較はMann-Whitney のU 検定,TBS による椎体骨折の有無の識別能はロジスティック回帰分析にて評価した.骨折群の女性ではTBS が腰椎や大腿骨のBMD とともに有意な低値を示した(P<0.001).TBS のオッズ比(OR)は若年成人データの1標準偏差(SD)あたりの減少に対して1.65(95% 信頼区間[CI]=1.27-2.13)であった.TBS は腰椎および大腿骨近位部BMD と中等度の相関を示した(それぞれr=0.443,P<0.001,r=0.291,P<0.001).TBS と椎体骨折との関連は腰椎と大腿骨近位部BMD を補正した後も統計学的に有意であった(OR=1.44, 95%CI=1.07-1.93,P=0.015).さらに,腰椎BMD が正常または骨量減少域の値を示す女性ではTBS が椎体骨折のリスクと有意に関連したのに対し(OR=1.66,95%CI=1.14-2.43,P=0.001),腰椎BMD と椎体骨折の間には有意な関連は認められなかった.これらの結果は,日本人高齢女性においてTBSの低下が椎体骨折のリスクと関連することを示しており,特に骨密度の比較的高い症例での骨折リスク評価における臨床的意義を示唆している.doi:10.11482/KMJ-J41(2)129 (平成27年9月16日受理)
著者名
田中 健祐
41
2
129-141
DOI
10.11482/KMJ-J41(2)129

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