h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

癌細胞の増殖・膜透過性に及ぼす外因性ATPの影響 -in vitroにおける検討-

癌細胞の増殖,膜透過性に及ぼす外因性ATPの影響,さらに本物質の癌化学療法への応用の可能性について,マウス培養細胞を用いて検討し以下の知見を得た. 1)ATPの添加により,Clone-M3細胞(マウス黒色腫)とEhrlich腹水癌細胞では,著明な細胞膜透過性の亢進, viabilityの低下がみられたのに対し,非癌化細胞である NIH 3T3 細胞,正常細胞である胎児線維芽細胞における変化は軽微で,この作用は癌細胞のみに特異的であった.2)ATPによるClone-M3細胞の膜透過性変化は,物質の流入,流出両機構に同時に起こった.3)Clone-M3細胞にみられた膜透過性変化はATPに特異的で,その代謝産物では起こらなかった.4)ATPにより, Clone-M3細胞の形態,接着性に変化が認められた.5)ATP処理後の癌細胞における各種抗癌剤の細胞増殖抑制効果は, 5-fluorouracil (5-FU), adriamycin (ADM), mitomycinC (MMC), nymustine hydrochloride (ACNU)では相加的, vincristine (VCR)では相剰的に増強した. これらの結果から, ATPを用いることにより,選択的癌化学療法が期待できるものと考えられた.
著者名
牟礼 勉
12
1
67-80
DOI
10.11482/KMJ-J12(1)67

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