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Online edition:ISSN 2758-089X

霊長類の眼動脈の研究・II-原猿類眼動脈の動脈造影写真による立体的解析-

原猿類3科4属の頭部の動脈造影を行い,立体的解析により眼窩に分布する動脈系を比較解剖学的観点より検討した.ヒト科と原猿類(ツパイ科,キツネザル科,ロリス科)では,眼球へ分布する動脈に比較解剖学的にも興味ある形態的相違が認められた. 1)網膜中心動脈はヒトでは眼動脈より分岐し眼球の約1.5cm 後方で視神経に侵入するのに対し,原猿類ではツパイ科を除き発達が悪く眼球後極直前で外側―後毛様体動脈より分枝し視神経内を殆ど走行しない.外側―後毛様体動脈は原猿類ではヒトと同様に良く発達しており眼球後極で短後毛様体動脈と長後毛様体動脈を分枝する. 2)内側―後毛様体動脈は原猿類ではツパイ科を除きヒトに比べ発達が悪く,眼球では短後毛様体動脈を分枝せず長後毛様体動脈のみを分枝する.ツパイ科では同動脈はよく発達している. 3)太い筋枝(眼筋動脈)は,ツパイ科,ロリス科では視神経の内側(眼筋動脈I)に観察されるのに対し,キツネザル科では視神経の内側・外側(眼筋動脈II)の両型が見られ,これらはヒトで認められる眼筋動脈I・眼筋動脈IIの両型に対応する.
著者名
吉井 致
11
3
307-317
DOI
10.11482/KMJ-J11(3)307

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