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Online edition:ISSN 2758-089X

人型結核菌体抽出多糖体成分(S.S.M.:SpecialSubstance, Maruyama)の抗癌作用に関する研究-末期癌剖検症例を中心とした癌の治癒と結核の治癒に関する病理学的考察-

最初免疫療法として登場した人型結核菌体抽出多糖体(SSM:丸山ワクチン)は今日厚生省治験薬として20余万人の癌患者が登録使用しているが,今回の一連の研究で,その抗癌作用についてはリンパ球, macrophageを主体とする免疫機転のみからは納得すべき結果が得られなかった.著者は生体内癌細胞に関してはリンパ球, macrophageよりも癌間質細胞からのコラーゲン産生と増殖が抗癌作用には極めて重要な役割を果たすことを乳癌症例の知見に基づいて,ヌードマウス移植癌の一連の実験で報告してきた.この際,生体内では癌に対して非特異的に賦活化したリンパ球, macrophageは癌細胞の傷害性よりも,むしろ癌間質からのコラーゲン増殖の促進に役立ち,ひいては抗癌作用として極めて重要な意義を有することを報告した.今回はさらにSSM使用末期癌多数例の治験例の中から10例の剖検例を中心に検討した結果,臨床経過の遅延とともに全例にコラーゲン増殖の促進がみられ,癌封じ込めによる癌浸潤,転移阻止がSSM長期使用例に見られた.この際,本来のSSM-A, B処法は少なくとも1年以上の生存期間が必要で,癌発見早期より使用する必要があり,転移した癌巣の小さいものほど著効があった.また,癌はCT等によって大きくなりつつもSSM使用によって組織学的に内容は異なり,癌破壊壊死部の修復機転が進行し,瘢痕化へと著しい進展が認められた.このコラーゲン増殖は肺転移巣よりも肝転移巣に著明であり,結核乾酪巣の瘢痕化と癌壊死部の瘢痕化とは極めて病理組織学的に類似し,初期においては血管系由来の線維芽細胞,内皮細胞等がコラーゲン増殖の主役を演ずるが癌浸潤破壊による全身の間葉系細胞,筋線維,神経線維,軟骨組織,さらに癌細胞自身,コラーゲン産生源となった.
著者名
木本 哲夫
11
3
355-392
DOI
10.11482/KMJ-J11(3)355

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