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グルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1) による膵β細胞保護の分子機構の解明 ~ヒト GLP-1アナログリラグルチドによる糖尿病モデルdb/dbマウスへの介入実験からの検討

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の膵β細胞保護作用の分子機構を明らかにするため,ヒトGLP-1アナログ製剤リラグルチド(LIRA)による糖尿病モデル動物への介入実験を行った.雄性10週齢のdb/db マウスに対し,LIRA もしくはリン酸緩衝液を2日間もしくは2週間皮下投与し,膵ラ氏島の形態学的,生化学的解析に加え,膵β細胞が主に存在する膵ラ氏島中心部の遺伝子発現の変化について,laser capture microdissection,real-time RT-PCR を用い検討した.LIRA の2週間投与は,db/db マウスの代謝パラメーター,インスリン感受性を改善した.LIRA の2週間投与後に採取した膵ラ氏島のグルコース応答性インスリン分泌反応(GSIS),インスリン含量は増加し,中性脂肪含量は減少していた.LIRA の2週間投与は,膵β細胞の分化増殖促進遺伝子,抗アポトーシス遺伝子,抗酸化ストレス遺伝子の発現を増加させ,分化抑制遺伝子,アポトーシス誘導遺伝子,小胞体ストレス遺伝子,脂質合成遺伝子の発現を減じた.LIRA の2日間投与は,僅かに代謝パラメーターを改善したが,膵ラ氏島のGSIS,インスリン含量,中性脂肪含量には影響しなかった.LIRA の2日間投与は,膵β細胞の分化増殖促進遺伝子,抗アポトーシス遺伝子の発現を増加させ,アポトーシス誘導遺伝子の発現を減じたが,酸化ストレス,小胞体ストレス,脂質合成に関する遺伝子の発現には影響しなかった.膵ラ氏島を用いた免疫組織染色(細胞増殖,アポトーシス,酸化ストレス)の結果は,遺伝子解析結果と一致した.LIRA は直接的な細胞動態調節作用とともに,糖脂肪毒性の改善を介した酸化ストレス,小胞体ストレスの軽減作用により膵β細胞量を増加させる.(平成22年10月22日受理)
著者名
下田 将司
36
4
313-325

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