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Online edition:ISSN 2758-089X

虚血心筋に及ぼすCa2+拮抗剤の影響に関する研究 第2編 実験的検討-冠状動脈狭窄犬におけるCa2+拮抗剤(Diltiazem)の心血行動態,局所心筋壁運動,乳酸代謝および局所心筋血流量に及ぼす効果-

著者は, diltiazemが労作狭心症に対しても有効である事を報告したが,その作用機序については不明な点も多い.そこで今回,冠狭窄犬を用い臨床常用量と同程度の血中濃度のdiltiazem投与下で労作狭心症に準じた心筋酸素需要量を上昇させる負荷を加える方法で, diltiazemの心血行動態,局所心筋壁運動,心筋代謝ならびに局所心筋血流量に及ぼす影響について検討した.i)冠狭窄・安静時:diltiazem投与により,血圧,心拍数は有意に低下減少した.冠狭窄部冠血流量は有意ではないが減少傾向を示した.虚血領域壁運動および乳酸代謝は有意に改善した.虚血部心筋血流量は減少傾向を示したが内層の血流低下は認めなかった。ii)冠狭窄・負荷時:収縮期血圧・心拍数をdiltiazem投与前後で一定に上昇させた負荷では, diltiazem投与により血行動態は著変を示さなかったが,虚血領域壁運動および乳酸代謝は軽度改善した.また,虚血部心筋血流量は有意差を認めなかったが,非虚血部および境界部での心筋血流量は主に外層での増しにより増加した.以上の成績から, diltiazemは虚血心筋を保護する作用を有する事が認められた.その作用機序としては,①血圧・心拍数の低下減少による心筋酸素需要側の抑制,②血圧・心拍数を上昇させた負荷条件下で虚血心筋血流量の増加を認めず虚血心筋の改善を示した事は, diltiazemの虚血心筋自体に対する直接的保護作用の存在が示唆された.
著者名
原田 頼續
11
1
47-65
DOI
10.11482/KMJ-J11(1)47

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