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マウスのパラコート経鼻投与モデルにおける人工肺サーファクタント気道内投与の治療効果―病理組織学的検討

 パラコート中毒に伴う肺障害は「パラコート肺」とも呼ばれており予後不良の徴候であるが,現在までのところ有効な治療方法は開発されていない.我々はパラコート肺の発生機序として,肺胞上皮細胞により血液中から能動的に取り込まれたパラコートによりサーファクタントを産生するⅡ型肺胞上皮細胞が傷害されることが原因ではないかとの仮説を立てた.この仮説を証明するためにマウスのパラコート肺モデルを作製し,人工肺サーファクタント(サーファクテンR,田辺三菱製薬株式会社,大阪)を気管切開下に片側肺へ投与して肺組織学的検討を行った.パラコート単独投与群では,パラコート投与2日後には肺胞内に多数の赤血球を認め,肺出血の所見であった.その後,次第に肺胞構造が破壊され,1ヶ月後には肺線維化が顕著となり,Masson trichrome 染色で線維化が確認できた.2ヶ月後には気腫状になっているものも認められた.サーファクタント片側肺投与群では,1ヶ月後の肺組織においては肺胞隔壁と思われる間質部分が肥厚し細胞成分の増加を認めたが,Masson trichrome 染色ではその部分に線維化の所見はなく肺胞構造も多く残存していた.また,サーファクタント注入側の肺は線維化の領域が明らかに減少していた.以上のことから,パラコート肺は,人工肺サーファクタントにより抑制できる可能性があることが明らかになった.今後は生命予後に及ぼす効果についての検討が必要であると考えられる.(平成22年10月14日受理)
著者名
井上 貴博,鈴木 幸一郎
36
4
295-300

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