h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

Liposome封入制癌剤体内分布に対する組織血流量変化の影響

癌化学療法の効果を増強するために,制癌剤封入liposomeとangiotensin IIを併用し, angiotensin IIの腫瘍,ならびに正常組織の血流に与える変化,およびliposome血中クリアランス,組織分布に対する影響について実験的に検討し,以下の結果を得た.1) Angiotensin II投与により,血圧は著明に上昇したが,心拍数,心抽出量に変化は認められなかった.2)腫瘍組織血流量は, angiotensin II 2/μg/min/kg持続投与により,約60%増加した.3) Liposomeとliposomal 5-FUの血中クリアランスは, angiotensin IIにより高く推移した.4) Empty liposomeの分布では, angiotensin II併用により,肝で5.61%/gから4.49%/gに減少し,腫瘍では0.30%/gから0.80%/gに増加した.5) Liposomal 5-FUの分布では, angiotensin II併用により,腎で6.79%/gから3.79%/gに減少し,腫瘍では1.09%/gから1.87% /gに増加した.6) 5-FU封入liposomeとangiotensin IIを併用することにより,他の群に比し高いT/N比が得られた.以上の結果から,制癌剤封入liposomeとangiotesnin IIの併用により,制癌剤を腫瘍組織へ選択的に到達させることが可能であると考えられた.
著者名
清水 裕英
10
2
174-185
DOI
10.11482/KMJ-J10(2)174

b_download