h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

小児鼠径ヘルニア・精系水瘤に対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(LPEC法)-川崎医科大学小児外科10年間の報告-

嵩原らが開発した新しい小児鼠径ヘルニアの術式,Laparoscopic Percutaneus ExtraperitonealClosure(LPEC 法)が2003年に報告され,標準術式として採用する施設が増えている.鼠径管構造を破壊することなくヘルニア門を閉鎖でき,従来法にはない有用性が報告されている.また,LPEC 法は小児精系水瘤や直接ヘルニアなど,その他の疾患にも応用される.当科では2005年からLPEC 法を導入し,2015年までの10年間で733例を経験した.今回,外鼠径ヘルニア,精系水瘤の疫学的特徴,卵巣ヘルニアと精系水瘤の内鼠径輪所見,対側腹膜鞘状突起の開存率,術中術後合併症について診療録から集計し,後方視的に検討した.また再発,対側発症例について,初回手術時と再手術時の所見から,原因を検討した.直接ヘルニアについて,内鼠径輪の形態を評価し,臨床的特徴を検討した.外鼠径ヘルニアは612例,精系水瘤は112例,直接ヘルニアが9例であった.外鼠径ヘルニア再発で従来法を行った症例が1例,精系水瘤で腹膜鞘状突起の開存がなく従来法に移行した症例が1例あり,その他の症例はLPEC 法を施行した.直接ヘルニアに対し,経過観察3例,LPEC 法1例,LPEC 法+後壁補強4例,鼠径部切開による後壁補強1例が行われた.術中術後の合併症は認めなかった.卵巣ヘルニアの子宮円索が対側に比し短く,精系水瘤の腹膜鞘状突起がほぼ全て開存していた.外鼠径ヘルニアの再発率は3例(0.49%)で,精系水瘤において再発は認めなかった.対側発症は3例(0.49%)に認めた.LPEC 法により,内鼠径輪所見の詳細な所見が明らかとなり,外鼠径ヘルニアのみならず,精系水瘤,直接ヘルニアにおいても応用が可能で,合併症,再発率についても良好な成績であった.doi:10.11482/KMJ-J42(1)33 (平成28年2月9日受理)
著者名
久山 寿子,他
42
1
33-44
DOI
10.11482/KMJ-J42(1)33
掲載日
2016.4.11

b_download