h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

解離試験法によるヒト腐敗血液の誤った血液型判定の一因について

殺害された後,土中に約10日間埋められて腐敗した婦人の体液より5種類の汚染菌を単離した.単離菌はBacillus pumilus, Staphylococcus,および3種類のグラム陰性杵菌であった.これら単離菌を1種類ずつヒトA型血液に添加し, 37℃で10日間培養して5種類の腐敗血を作製した. 腐敗血の血液型活性は吸収試験と解離試験によって調べた.吸収試験で調べるとこれら5種類の腐敗血ともA型活性の低下やB型活性の付加は全く認められなかった.ところが解離試験で測定するとBacillus pumilusによる腐敗血においてA型活性の大幅な減少がおこっていた.他の4種類の腐敗血においてはA型活性の変化は検出されなかった.また, Bacillus pumilusによる腐敗血ではB型活性の付加は観察されなかったが2種類の腐敗血(N0. 1とNo. 3)においてごくわずかながらB型活性が付加していた. Bacillus pumilusによる腐敗血を用いて解離試験の各過程をくわしく観察した結果,吸着過程において固定した血球がサラシ布から遊出することが示された.このような血球の遊出が解離試験で血液型を判定する場合に誤った結果をもたらす一因となると思われる.
著者名
美禰 弘子, 他
9
4
319-325
DOI
10.11482/KMJ-J9(4)319

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