h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

過敏性肺臓炎の実験病理学的検討

実験的に,マウスを使用して,過敏性肺臓炎の発生病理を検討した.感作抗原には,Bacterial a Amylase (BαA)を利用し,種々の感作方法を試みた.すべての感作方法のあと,誘発のための最終曝露は気道を通した吸入法で行った.気道吸入法,または1回だけの筋肉内注射で感作を行った群では,過敏性肺臓炎の像は得られなかった.しかし,5回筋肉内注射によって感作した場合には,可逆的ではあるが,終末細気管支を中心とした単核細胞反応,および肉芽腫様変化がみられた.なお,誘発後2週間目から検索しているためか,その時点では,好中球の関与は,明らかでなかった. 抗原に対するIgG抗体のレベルや,肺組織でのPAP法を用いたIgG沈着の増減と肉芽腫様変化の形成の間には,経過を追ってみると時間的ズレがみられた.すなわち,初期の血清抗体価の上昇は,肺組織内IgGの沈着と平行し,両者の減少しはじめる時期になって肉芽腫様変化が,肺にみられた.細胞反応を主体とした増殖性肺胞中隔炎(肺臓炎)から進展して,固定化した進行性線維性胸隔炎(肺線維症)を発生させるためには,抗原の強さ,頻回の感作,動物種など今後注意しなければならない点があることを考察した.
著者名
日浦 研哉
8
4
322-331
DOI
10.11482/KMJ-J8(4)322

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