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Online edition:ISSN 2758-089X

痙攣性疾患患児における抗てんかん剤血中濃度に関する研究 第Ⅲ編 てんかんを合併した重症心身障害児の抗てんかん剤血中濃度について

てんかんを合併した重症心身障害児140名について抗てんかん剤Phenobarbital (以下PBと略す), Phenytoin (PHTと略す), Primidone (PRMと略す), Carbamazepine (CBZと略す)の血中濃度をEMIT法により測定し,次の結果を得た. 1.服用中の抗てんかん剤は11種類を数え, 1人平均3.2±1.6剤であった. 2.投与量と血中濃度との関係はPB, PHT, PRMでは5%以下の危険率で有意の相関を認めたが,CBZでは認めなかった. 3.体重とIevel/dose ratioとの関係も2.と同様の結果を得た. 4.血中濃度の度数分布をみると,所謂有効血中濃度の範囲内に入るものはそれぞれ,PBでは55%,PHTでは0%,PRMでは63%,CBZでは52%を占めた. 5. PBを併用していないPRM服用者において, PB血中濃度/PRM投与量・比は1.2±0.5, PB/PRM血中濃度・比は2.5±1.1であった.また併用したPHTはPRMの血中濃度ならびにPRM由来のPBの血中濃度を有意に上昇させる傾向があり,PRM,PHT併用例の中に40μg/ml以上の高PB濃度に達したものが3例含まれていた. 6. PB+α併用群とPB+PRM+α併用群を比較すると後者でPBの血中濃度が有意に上昇し, 40μg/ml以上の高濃度に達した8例はすべて後者に属しており,しかもこの8例にはPHTをも合わせて併用していた.また後者のPB血中濃度/PRM投与量・比は2.6±6.9, PB/PRM血中濃度・比は5.0±2.0であった. 7.上記の4種の抗てんかん剤の血中濃度を発作抑制群と未抑制群について比較した.PBとCBZにおいて両群の間に有意の差を認めた. 8.重症心身障害児では抗てんかん剤による中毒症状が臨床的に把握しがたいので,その血中濃度の測定は中毒濃度の摘発に有用であった.
著者名
中村 誠
7
1
12-21
DOI
10.11482/KMJ-J7(1)12

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