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外因性基質を用いたヒト赤血球膜 protein kinase の酵素学的検討: 正常, 遺伝性球状赤血球症, 臍帯血赤血球について

ヒト赤血球膜蛋白は,その膜結合酵素protein kinaseによりリン酸化を受ける.このkinaseには, cyclic 3': 5'adenosine monophosphate (c-AMP)依存性及び非依存性の酵素が存在する.また,一方,ヒト赤血球膜にはhistone typeII及びa-caseinを外因性基質とするリン酸化酵素,即ち, histone kinase及びcasein kinaseの存在も知られている.そこで本研究では,ヒト赤血球膜ghostにおけるhistone kinase及びcasein kinaseの酵素学的性状を検討し,併せて病的赤血球における意義についても論及した.まず, histone kinaseはc-AMP依存性酵素で10-6M c-AMP濃度で最大活性が認められた.一方casein kinaseはc-AMP非依存性酵素であった.外因性基質の至適濃度及び至適pHは, histone kinase及びcasein kinaseともほほ同様でpH6.0~8・0で最大活性を示した.反応系に添加した5'-adenosine-triphosphate濃度はhistonekinaseにおいて500μMで最大活性が得られた.反応の経時的変化ではcasein kinaseでは2時間までほほ直線的にリン酸化の増大がみられるのに対しc-AMP依存性histonekinmase活性は, 20分まで著しく増大し,その後,脱リン酸化反応のため次,低下傾向を示した. Mg2+イオン濃度の影響についてはhistonekinase10-2Mで,また, caseinkinaseでは10-1Mで最大活性が得られた.次に,遺伝性球状赤血球症(HS)患者の赤血球膜において外因性基質を用いてcaseinkinase及びhistone kinase活性を検討した.本症患者の一部でc-AMP依存性の内因性膜蛋白リン酸化能が低下しているにもかかわらず外因性基質を用いたhistone kinase及びcasein kinase活性の低下は認められなかった.また,幼若赤血球比率の高いヒト臍帯血赤血球において,リン酸化能を検討したが, histone kinase及び(casein kinase活性は,正常対照群に比べ著差は認めなかった.以上,外因性基質を用いたヒト赤血球膜酵素protein kinase活性の測定及びその酵素学的性状について報告したが,本測定は内因性膜蛋白リン酸化能の検討と共に,赤血球膜代謝の研究に有用であろう.
著者名
宮島 厚介
7
2
111-119

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