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Online edition:ISSN 2758-089X

血痕の陳旧度に関する研究(第1報) ―室温放置血痕について―

血痕の陳旧度の判定は法医学上最も重要な課題の一つである.この間題に関して種々の方法が試みられてきたが,満足すべき方法はいまだない.そこで著者はセルロース・アセテート膜電気泳動法を使用する新しい血痕の陳旧度の判定法を試み以下の結果を得た.1)全ての血痕につきAlb/Hb比を計測したがAlb/Hb比は経日的に血痕付着2カ月後まで減少した.2)血痕中のHbおよびAlb濃度は室温保存下で3カ月後まで減少しなかった.3)泳動後の染色液をPonceau-3RからnigrosinおよびCoomassie brilliant blue-R250に変えたがそのAlb/Hb比に変化は観察されなかった.4) Ponceau-3R染色の血清斑痕のNaOH抽出液の510nmに於ける吸光度は2カ月後まで減少した.すなわち血清斑痕に於けるPonceau-3Rの結合能は経目的に減少する.以上の結果よりこのPonceau-3R染色による電気泳動法は簡便であり実際の法医鑑識上,血痕の陳旧度の判定へ応用ができると考えられた.
著者名
津々見 明
7
3.4
191-196
DOI
10.11482/KMJ-J7(3.4)191

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